発表でのかまし方
大学時代に所属していたゼミでは月に一度パワーポイントを使ってプレゼンするルールがあった。
1人20分 教授から提示された本を読み、改善点や自分の意見を発表するごく普通のものだった。
発表前日 台本を作り、パワーポイント、ゼミ生に配るレジュメ、全てを仕上げいつも通り布団に入った。
たが全く寝ることができない
何故だ?
何か物足りない
そんな時、心の奥底で1つの感情が生まれた
かましたい
一発かましたい
ゼミの教授に一発かましたい
気がつくと私は布団から抜け出しパワーポイントを見直した。
どこかに"かませる"場所はないかと
そして見つけた
ここだ
ここしかない
教授の度肝を抜く場所はここしかないだろ!
ハサミに「ご静聴ありがとうございました」と喋らせる
ギリギリ
本当にギリギリなラインを攻めたと我ながら褒めたい。
これが消しゴムや他の文具なら多分ギリギリアウトだろう。
ハサミという一歩間違えれば凶器となる文具に、丁寧な言葉を喋らせるというギャップによりこの絶妙なバランスは成り立っている。
「君は本当にユーモラスな男だな!」
そんな言葉を期待しながら当日、意気揚々と発表を行った。
普通に無視された。
見て見ぬ振りをしているとかではなく、本当に見えてなかったのかもしれない。
そう思わせるほど教授は華麗にスルーした。
そして、発表が終わると今度は教授からの質問に答えなければいけない。
完全に凹んでいたが、地獄は続く。
先ほどのスライドはこのパワーポイントの最後のスライド。すなわち、教授の質問に答えている間は永遠に表示され続ける。
滑り散らかしたボケが永遠に馬鹿でかいモニターに映され続け、ゼミ室は重苦しい空気が流れていた。
30分近い恥辱プレイから解放され、自分の席に戻った瞬間教授から質問が飛んだ。
「なんでハサミが喋っているんだ?」
俺もわかんねぇよ