遠い背中

大学二年生の秋ごろ、私は友人のサークルの飲み会に参加した。

 

友人とは高校時代からの付き合いで、当時から全くモテなかった私と馬が合い、常に行動を共にしていた。

 

そんな友人のサークルなんて「私たちと同じような奴らをかき集めたサークルなんだろう」と高を括っていたところ、驚愕してしまった。

 

まず会場が小洒落たテラスである。ここまではギリギリ良しとしよう。しかし、このテラスには致命的な欠陥があった。

 

「入り口が絶望的にわかりづらい」

 

緑豊かな田舎で育った私が渋谷の小洒落たテラスの前をウロウロしていたら100%職質されるに決まっている。そうに違いない。

 

入り口を探すのを諦め、二郎系でも食べて帰ろうかと思っていると、地下の階段から髪の毛が緑色の実写版SUUMOみたいなやつが現れた。

 

「奴」だ

 

間違いない

 

私とともに悲惨な高校生活を過ごした

 

「奴」だ

 

 

「奴」は小洒落たテラスに怯むこともなく私を招き入れた。

その後のことはよく覚えていない。酔いが回って記憶が飛んでしまったのか、はたまた「奴」の髪色に衝撃を受けすぎたのかは定かではないが、全く覚えていなかった。

 

「奴」の変わり果てた姿に不安と少しの劣等感を抱きながら帰路に就いた。

 

 

「奴」が変わってしまったのか

 

それとも

 

「私」が変わってしまったのか